皆さんこんにちは。
さて今回は
~設計(衛生設備編)~
ということで、衛生設備工事における設計の目的・構成・検討ポイント・近年の動向などを、実務者の視点から深く掘り下げて解説します。
ビル・マンション・学校・工場・医療施設
あらゆる建築物において、人が生活し、働き、活動するうえで「水」は欠かせません。
この水を、安全・快適・効率的に供給・排出するために不可欠なのが、「衛生設備の設計」です。
建物が完成してからでは手直しが困難な、隠蔽される設備=衛生系統だからこそ、設計段階での的確な判断と調整が求められます。
衛生設備設計とは、建築物において「給水」「給湯」「排水」「通気」「衛生器具配置」などを合理的・効率的に計画・図示する行為です。
設計内容は、以下の工事に直結します
| 項目 | 設計内容 |
|---|---|
| 給水設備 | 配管ルート、管径、圧力計算、受水槽・加圧ポンプ選定 |
| 給湯設備 | 熱源選定(ボイラー・電気温水器等)、給湯配管 |
| 排水設備 | 排水系統、勾配設計、トラップ配置、通気方式 |
| 衛生器具配置 | 便器、洗面、浴槽などの仕様・配置・接続方式 |
| 特殊設備 | 雨水排水、グリーストラップ、浄化槽、医療系処理槽等 |
建築条件の把握(平面図・立面図・構造図の確認)
法規制の確認(建築基準法、水道法、排水基準など)
使用条件の整理(使用人数・同時使用率・負荷計算)
ルート計画(スリーブ・シャフト・ピットの検討)
機器選定と図面化(設備機器と配管系統の設計)
コストと省エネ性能の検討(初期・運用コストの最適化)
施主・建築・構造・電気・空調設計との連携・調整
👉Point: 設計は「図面を描く」だけでなく、全体との整合性を保つ「調整業務」でもあります。
給水配管は最短ルートで圧力損失を最小限に
排水配管は1/100〜1/50の勾配確保が必須
通気管は封水保持と悪臭防止のための“呼び配管”が必要
天井内、床下、PS(パイプスペース)の断面衝突防止
使用器具の流量から必要な水圧・動水頭を算出
立体建物では落差圧を考慮した加圧設備設計が必要
逆流防止器の圧損、分岐点での流量分散も考慮
👉実務ヒント: 「上階でシャワーが弱い」「同時使用で排水が詰まる」といったトラブルは、設計時の計算不足に起因することが多いです。
車いす対応便器、手洗い器の高さ・間隔の調整
点検口の設置場所、器具メンテナンスの作業スペース確保
水はね防止のための*給湯温度制限(50℃以下)などの安全設計
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| スリーブ計画 | 施工時に壁・梁貫通が不可になる可能性あり |
| 架橋ポリエチレン管 or 鋼管 | 工場/病院など使用条件によって素材が変わる |
| 防音・防振設計 | 住戸・宿泊施設では配管の振動音がクレームの元に |
| 凍結防止 | 寒冷地では電熱ヒーター・保温材の指定が必須 |
3Dモデルで空間干渉を事前にチェック
他設備(空調・電気)とのルート衝突回避が効率的に
建物の“ライフサイクル”全体での設計が可能に
節水型器具(ロータンク便器、センサー水栓)
高効率給湯器・ヒートポンプ給湯システムの活用
災害対応型の雨水・中水利用システムの導入が増加
衛生設備設計は、単なる「水道管の計画」ではありません。
それは
建築の中に命を通わせ、人の暮らしに寄り添う“循環システム”をデザインする仕事です。
設備が“目に見えない”からこそ、設計には「未来を読む力」が必要
トラブルが“起きないように”考え抜く設計が信頼を生む
すべての人が「何も気にせず快適に使える」空間を創る、それがプロの仕事
衛生設備の設計は、「施工を成功させるための道しるべ」であり、
同時に、建築の安全性・快適性・機能性を担保する「縁の下のデザイン」でもあります。
だからこそ、設計者は図面の先にある
🏢 建物の中で暮らす人々の姿
🛁 毎日使う水まわりの快適さ
🧑🔧 10年後のメンテナンス性まで
“見えない未来”まで想像しながら設計する力が求められるのです。
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