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日別アーカイブ: 2025年4月21日

HSIのよもやま話~設計(衛生設備編)~

皆さんこんにちは。

 

さて今回は

~設計(衛生設備編)~

ということで、衛生設備工事における設計の目的・構成・検討ポイント・近年の動向などを、実務者の視点から深く掘り下げて解説します。

 

見えない配管が支える、建築の“いのちの循環系”をデザインする

ビル・マンション・学校・工場・医療施設
あらゆる建築物において、人が生活し、働き、活動するうえで「水」は欠かせません。

この水を、安全・快適・効率的に供給・排出するために不可欠なのが、「衛生設備の設計」です。

建物が完成してからでは手直しが困難な、隠蔽される設備=衛生系統だからこそ、設計段階での的確な判断と調整が求められます。


✅ 衛生設備設計とは?

◼ 設計の定義と役割

衛生設備設計とは、建築物において「給水」「給湯」「排水」「通気」「衛生器具配置」などを合理的・効率的に計画・図示する行為です。
設計内容は、以下の工事に直結します

項目 設計内容
給水設備 配管ルート、管径、圧力計算、受水槽・加圧ポンプ選定
給湯設備 熱源選定(ボイラー・電気温水器等)、給湯配管
排水設備 排水系統、勾配設計、トラップ配置、通気方式
衛生器具配置 便器、洗面、浴槽などの仕様・配置・接続方式
特殊設備 雨水排水、グリーストラップ、浄化槽、医療系処理槽等

✅ 衛生設備設計の流れ

  1. 建築条件の把握(平面図・立面図・構造図の確認)

  2. 法規制の確認(建築基準法、水道法、排水基準など)

  3. 使用条件の整理(使用人数・同時使用率・負荷計算)

  4. ルート計画(スリーブ・シャフト・ピットの検討)

  5. 機器選定と図面化(設備機器と配管系統の設計)

  6. コストと省エネ性能の検討(初期・運用コストの最適化)

  7. 施主・建築・構造・電気・空調設計との連携・調整

👉Point: 設計は「図面を描く」だけでなく、全体との整合性を保つ「調整業務」でもあります。


✅ 設計における重要な検討事項

🔸 1. 配管ルートと勾配設計

  • 給水配管は最短ルートで圧力損失を最小限に

  • 排水配管は1/100〜1/50の勾配確保が必須

  • 通気管は封水保持と悪臭防止のための“呼び配管”が必要

  • 天井内、床下、PS(パイプスペース)の断面衝突防止

🔸 2. 管径・圧力計算

  • 使用器具の流量から必要な水圧・動水頭を算出

  • 立体建物では落差圧を考慮した加圧設備設計が必要

  • 逆流防止器の圧損、分岐点での流量分散も考慮

👉実務ヒント: 「上階でシャワーが弱い」「同時使用で排水が詰まる」といったトラブルは、設計時の計算不足に起因することが多いです。


🔸 3. 器具の配置とユニバーサルデザイン対応

  • 車いす対応便器、手洗い器の高さ・間隔の調整

  • 点検口の設置場所、器具メンテナンスの作業スペース確保

  • 水はね防止のための*給湯温度制限(50℃以下)などの安全設計


✅ 設計時に見落とされがちな確認ポイント

確認項目 内容
スリーブ計画 施工時に壁・梁貫通が不可になる可能性あり
架橋ポリエチレン管 or 鋼管 工場/病院など使用条件によって素材が変わる
防音・防振設計 住戸・宿泊施設では配管の振動音がクレームの元に
凍結防止 寒冷地では電熱ヒーター・保温材の指定が必須

✅ 近年の設計動向とトレンド

✅ 1. BIM(Building Information Modeling)との連携

  • 3Dモデルで空間干渉を事前にチェック

  • 他設備(空調・電気)とのルート衝突回避が効率的に

  • 建物の“ライフサイクル”全体での設計が可能に

✅ 2. 省エネルギー設計

  • 節水型器具(ロータンク便器、センサー水栓)

  • 高効率給湯器・ヒートポンプ給湯システムの活用

  • 災害対応型の雨水・中水利用システムの導入が増加


✅ 衛生設備設計は「建築と人をつなぐインターフェース」

衛生設備設計は、単なる「水道管の計画」ではありません。

それは
建築の中に命を通わせ、人の暮らしに寄り添う“循環システム”をデザインする仕事です。

  • 設備が“目に見えない”からこそ、設計には「未来を読む力」が必要

  • トラブルが“起きないように”考え抜く設計が信頼を生む

  • すべての人が「何も気にせず快適に使える」空間を創る、それがプロの仕事


✅ 衛生設備設計は、“見えないものを想像できる力”が問われる仕事

衛生設備の設計は、「施工を成功させるための道しるべ」であり、
同時に、建築の安全性・快適性・機能性を担保する「縁の下のデザイン」でもあります。

だからこそ、設計者は図面の先にある
🏢 建物の中で暮らす人々の姿
🛁 毎日使う水まわりの快適さ
🧑‍🔧 10年後のメンテナンス性まで

“見えない未来”まで想像しながら設計する力が求められるのです。

 

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