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月別アーカイブ: 2025年10月

HSIのよもやま話~図面の読み方と施工計画—“干渉ゼロ”で流れる経路を描く 📐🗺️~

皆さんこんにちは。

 

1️⃣ 図面の全体像をつかむ—「どの地図で歩くか」を決める
給排水の施工は“地図の精度”で決まります。まずは使う図面の役割を整理しましょう。 – 意匠図(A図):仕上げ・天井高さ・見切り・器具位置の“見え方”。器具の芯や壁の下地・点検口の位置を確定するのに必須。🎨 – 構造図(S図):梁・スラブ厚・開口補強・耐火区画。スリーブ可否やあと施工アンカーの可否をここで判断。🧱 – 設備基本計画図(P図/衛生):系統・機器構成・概略ルート。実施設計の前提条件を共有するための“設計意図”。💡 – 施工図(Shop Drawing):実際に通す“寸法入りの答え”。レベル(FL±)、勾配、径、継手、支持金具、点検口まで盛り込みます。🧰 – 詳細図(Detail)・納まりスケッチ:梁貫通・器具裏・PS内の“狭所”は詳細図で詰める。✍️
コツ:意匠×構造×設備を同時に開き、同一点(例:洗面台芯)を三面図のように確認。天井懐・梁下・ダクトとの取り合いを“断面”でチェックするとミスが激減します👀。

 

2️⃣ 記号・レイヤ・寸法表記を“運用ルール化”する
現場の混乱は表記のブレから生まれます。社内標準を作り、全員で統一しましょう。 – 色分け:給水=青、給湯=橙、循環=赤、排水=茶、通気=緑、雨水=水色、ガス=黄 など。矢印で流向も併記。🎯 – 線種:露出=実線、隠蔽=一点鎖線、予備配管=破線。天井内と床下で線種を分けると一目瞭然。 – 高さ(レベル):CL(天井下端)からのクリア、FL±での寸法を併記。例:H=CL-150(吊り金具下端)、管芯H=2,300。 – 器具符号:WB(洗面)、WC、SK(流し)、FD(床排水)、VP/VU(塩ビ管)等を凡例にまとめ、図枠に常置。 – 注記:勾配1/100、ラッキングt=0.4、保温t=20、支持ピッチW=1.5mなど“ルール系”は注記に集約📎。

 

3️⃣ ルート設計の思考法—“最短”より“最良”
配管ルートは最短距離=正解ではありません。以下の5要素のバランスで決めます。
1. 点検性:バルブ・ヘッダー・器具裏は手・工具が入る。点検口のサイズと位置を図面上で確定🔍。
2. 音と振動:寝室や会議室の上を立て管で横断しない。排水は梁下に吊るよりPS(パイプスペース)に集約🔇。
3. 勾配と通気:排水は連続勾配を最優先。段差が必要なら“落とし”位置を詳細図で固定。通気立ては“末端から近い”を意識。
4. 意匠との整合:化粧梁や間接照明ダクトと干渉しない。見える配管はすだれ配管で等ピッチ・等間隔に✨。
5. 施工性:長物の搬入動線、曲げ加工の可否、溶接の姿勢(上向/横向)を想像し、“現場で組めるか”で判断。
失敗あるある:排水横主管を“ギリギリ”で通し、あとで天井下地と干渉→仕上がり寸法が下がる→クレーム😵。→ 余裕寸法(≥+30mm)の考え方を標準化しましょう。

 

4️⃣ 取り合い調整(干渉チェック)の段取り
• 干渉会議(週1):空調(ダクト)・電気(ラック/ケーブル)・スプリンクラーと立体で合意。梁下基準線を共有。
• ゾーン分け:PS周り、トイレコア、機械室、厨房…“衝突しやすい場所”から先に決める。
• 断面図の量産:要所は1/20〜1/10で断面を作図。梁下クリア、断熱厚、ラッキング厚まで描くと現場が迷いません✍️。
• スリーブ図/コア抜き図:構造図の主筋位置を確認し、事前承認。貫通部は耐火措置材料・仕様を図面に明記🔥。

 

5️⃣ 施工計画の骨子—WBS×工程×資材
• WBS(作業分解):現調→墨出し→スリーブ→支持金具→幹線→枝管→機器据付→試験→保温→クリーニング→引渡し。
• 工程表:クリティカルパスはコア抜き・立て管・器具納期。外部足場解体や天井塞ぎと連動。
• 資材計画:長尺物の保管場所、仮置き台数、夜間搬入の可否。継手の欠品リスクには代替品承認を準備📦。
• 人員配置:狭所は少人数×長時間より短時間×入替制で安全性を確保。技能に応じてペアを組む👥。

 

6️⃣ 品質管理の“型”—記録が品質をつくる
• チェックシート:ねじ込みトルク、接着養生時間、溶接記録、圧力試験値、勾配実測—“測ったら記録”を徹底📝。
• 写真台帳:配管後→保温前→ラッキング後の3段階撮影。バルブ番号・器具番号のプレートが写るように📸。
• トレーサビリティ:材料のミルシート・ロット、シール材の品番、工具校正日を台帳化。問題発生時の切り分けが迅速に。

 

7️⃣ リスクと未然防止—“想定外”を減らす
• 既設不明図:開口して現認→臨時詳細図を即作成→承認。想像で進めない。
• 器具納期遅延:仮設器具で圧試を先行し、工程を止めない。並行して見切り・天井塞ぎを実施。
• 臭気逆流:通気不足・封水切れ・隠れサイホン。通気立て追加や器具トラップ見直しで是正。
• 水圧不足:同時使用率の見積り誤り。分岐位置・管径を再設計し、必要に応じ増圧ポンプを検討。

 

8️⃣ ケーススタディ 🧪
ケースA:集合住宅のトイレコア
– PSに排水立管×2、通気立管×1、給水立管×1。梁下2,100、天井仕上2,300、懐200の制約。
– 解:排水横枝を“PS直近で立ち上げ→梁上を回避→短距離で器具へ”。通気はループ通気+伸頂通気で封水安定。点検口は器具裏に300×300を確保🔧。
ケースB:商業施設の厨房
– グリスト・雑排・給湯・蒸気・ダクトが密集。排水は油脂が多く勾配1/50を確保。
– 解:床上げで勾配を取り、清掃口の間隔を短く(10m以内)。配管はグリスト→横主管→桝までを一体で描き、床補強と同時調整🍳。

 

9️⃣ 施工計画書テンプレ(抜粋)
• 目的・適用範囲・関連図書📚
• 体制図・有資格者一覧(酸欠・高所・溶接)🧑‍🏫
• 工程表(クリティカルパス明示)🗓️
• 作業手順(WBS)・要領書リンク🔗
• 品質計画(検査項目・基準・記録様式)✅
• 安全計画(KY、保護具、火気管理)⛑️
• 環境計画(騒音・粉塵・臭気対策、廃材処理)🌱
• リスクアセスメント(想定外対応)⚠️
• 参考詳細図(納まりスケッチ)📐

 

🔟 チェックリスト ✅
☐ 梁下・天井懐・断熱厚を断面で確認した
☐ 排水の連続勾配と通気のルートを確定した
☐ スリーブ径・位置・耐火仕様を承認済み
☐ バルブ・ヘッダー周りの点検口が“手が入る”
☐ 代替材・欠品時の運用を合意済み
☐ 圧力試験・通水試験の基準値と記録様式を準備
☐ 写真台帳の撮影段階を3区分で設定

 

1️⃣1️⃣ まとめ ✨
図面は“現場の言語”です。読み解きのルールを全員で共有し、断面で干渉を潰し、WBSで段取りを固める。これだけで手戻り・クレーム・コスト超過は劇的に減ります。次回は、建物の心臓である給水方式(直結・受水槽・増圧)を深掘りします!🚰⚙️💪 ## 第4回:給水方式—直結給水・受水槽・増圧ポンプを極める 🚰⚙️

 

 

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